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地代増額請求、固定資産税の何倍が妥当か|江戸川区の借地で継続地代を4つの手法で試算

Appraisal Journal

地代増額請求で認められる継続地代は、直近に合意した地代からの事情の変化で決まります。差額配分法・利回り法・スライド法・比準賃料の4手法、江戸川区の住宅地で効く固定資産税の特例と公租公課倍率の目安を、南小岩の借地の試算で西葛西の不動産鑑定士が整理します。

訴訟・調停公開: 25分で読了著: 吉田 健人

地主から地代増額請求の通知が届いた。あるいは地主の立場で、十数年据え置いてきた地代を上げたいが、いくらなら通るのか分からない。江戸川区の旧市街に残る借地では、こうしたご相談が地価の上昇とともに増えています。「固定資産税が上がったから」「近所はもっと高いから」という説明だけでは、相手は納得しませんし、調停でも通りません。

結論から申し上げます。いま払われている地代を改定する場面の地代(継続地代)は、新しく土地を貸す場合の相場(新規地代)とは別の物差しで決まります。不動産鑑定評価基準は、差額配分法・利回り法・スライド法・賃貸事例比較法の4つの手法で求めた試算値を関連づけ、前回の合意からの事情の変化を踏まえて決めるとしています。固定資産税の何倍という目安は、あくまで補助的な確認用です。

私たち鑑定士は、地代の増減額をめぐる相談を受けると、まず「前回いつ、いくらで合意したか」を確認するところから始めます。本記事では、借地借家法の仕組み、継続地代の4つの求め方、江戸川区の住宅地で効いてくる固定資産税の特例を、南小岩の想定事例で順に整理します。契約解釈や訴訟の見通しは弁護士に、税額の詳細は税理士にご確認ください。

地代増額請求は法律上どう認められるのか

借地借家法11条が定める3つの理由

地代の増額・減額を求める権利は、借地借家法11条1項に定められています。地代が、土地に対する租税その他の公課の増減、土地の価格の上昇または低下その他の経済事情の変動、近傍類似の土地の地代との比較のいずれかによって「不相当」となったとき、当事者は契約の条件にかかわらず、将来に向かって地代の増減を請求できます。平成4年8月1日より前に設定された借地にも、旧借地法12条に同じ趣旨の規定があります。

この権利は、相手が承諾しなくても、請求の意思表示が届いた時点から将来に向かって効力を生じます。ただし、裁判で認められるのは「相当な額」までで、請求額そのものが認められるわけではありません。

増額しない特約は有効、自動改定特約にも限界がある

同条1項ただし書は、一定期間地代を増額しない特約がある場合はそれに従うとしています。逆に、減額しないという特約があっても、借地人からの減額請求は妨げられません。

「3年ごとに◯%増額する」といった自動改定特約も、万能ではありません。最高裁判所は平成15年6月12日の判決で、借地借家法11条1項は強行法規(当事者の合意で適用を排除できない規定)であり、特約の基礎となった事情が失われ特約による改定が不相当になった場合には、特約の適用を争うことができるとしました。

協議中は「相当と認める額」を払えばよい

増額請求を受けた借地人は、協議が調わない間、自分が相当と認める額を支払えば足ります(借地借家法11条2項)。ただし、裁判で増額が確定し不足額が出れば、年1割の利息を付けて精算しなければなりません。減額請求で地主が受け取り過ぎていた場合も、同じく年1割の利息を付けて返還します(同条3項)。根拠なく争いを長引かせると、どちらの側も損失が膨らみます。地主が受け取りを拒んだ場合の供託など手続面の判断は、弁護士にご確認ください。

継続地代の求め方|鑑定評価で使う4つの手法

新規地代と継続地代は別の物差し

新規地代は、これから土地を貸す場合に市場で成立する地代です。継続地代は、既に続いている契約の地代を改定する場面の地代で、不動産鑑定評価基準(総論第7章)は、現行の地代を前提に、契約当事者が現行地代を合意した時点(直近合意時点)以降の公租公課、土地価格、近隣の地代の変動などを総合的に勘案し、当事者間の公平に留意して決めるとしています。

直近合意時点は、契約開始日でも前回の更新日でもなく、当事者が実際に地代の額を合意した日です。最高裁判所も平成20年2月29日の判決(建物の賃料の事案)で、自動改定特約で増額された賃料ではなく、当事者が現実に合意した直近の賃料を基にして、それ以降の経済事情の変動を考慮すべきだと判断しています。地代の改定交渉でも、まずこの日付を確定させることが出発点です。

4つの手法の考え方

手法何に着目するか結果の傾向
差額配分法新規地代と現行地代の差高く出やすい
利回り法合意時の地代利回り地価に連動
スライド法合意時からの変動率緩やか
比準賃料近隣の継続地代の事例事例次第

差額配分法は、新規地代と現行地代の差額のうち貸主に帰属する部分を現行地代に加えます。利回り法は、直近合意時点の純地代(地代から公租公課を差し引いた額)の土地価格に対する利回りを現在の土地価格に掛け、公租公課を足します。スライド法は、直近合意時点の純地代にその後の変動率を掛けて公租公課を足します。比準賃料は、近隣で継続している借地の地代と比べて求めます(賃貸事例比較法)。

4手法を関連づけて決める

基準は4つの試算値を関連づけて決定するとしており、一つの手法の結果をそのまま採ることはしません。近隣の継続地代の事例が乏しい住宅地では比準賃料の重みが下がるなど、資料の確かさと事案の性格で重みづけが変わります。

江戸川区の借地地代と固定資産税の関係

住宅地は固定資産税が評価額の6分の1で計算される

江戸川区の住宅地では、住宅が建つ土地のうち1戸あたり200平方メートルまでの部分(小規模住宅用地)は、固定資産税の課税標準が評価額の6分の1、都市計画税は3分の1に軽減されます。さらに東京都は23区内の小規模住宅用地について、都市計画税を2分の1に軽減する措置を令和8年度も続けています(東京都主税局)。税率は固定資産税1.4%、都市計画税0.3%です。

自宅が建つ区内の借地はほとんどがこの特例の対象で、公租公課(固定資産税・都市計画税)は土地の価格に比べてかなり小さくなります。

公租公課倍率法は補助的な目安にとどまる

実務では、地代が公租公課の何倍かを見る「公租公課倍率法」もよく使われます。東京23区の住宅地では公租公課の3倍から5倍程度が一つの目安とされ、日税不動産鑑定士会が3年に1回まとめる『継続地代の実態調べ』など、東京23区を中心とした継続地代の調査資料もあります。

ただし、この方法は不動産鑑定評価基準の4手法には含まれない、簡易的・補助的な確認方法です。税額の何倍という説明だけでは「なぜ3倍なのか」に答えられないため、調停や訴訟では4手法による検討の裏付けとして使います。

地価上昇と評価替えが重なる時期

江戸川区の住宅地は、2026年(令和8年)地価公示で前年比5.7%上昇し、2025年の5.1%から上昇幅が拡大しました(国土交通省地価公示、東京都財務局の概要)。固定資産税の土地の評価は3年に1度見直され(評価替え)、次回は令和9年度です。地価の上昇は固定資産税の評価額にも遅れて反映されるため、地代の据え置きが長い借地ほど、地主の側からみた手取り(純地代)は目減りしていきます。江戸川区の地価動向は2026年地価公示、江戸川区の住宅地は5.7%上昇で詳しく整理しています。

想定されるケース|南小岩の借地で継続地代を試算する

南小岩の住宅地、地積150平方メートル、木造の自宅が建つ旧法借地です。直近合意時点は2014年で、地代は年24万円(月2万円)のまま据え置かれています。地主から「固定資産税の4倍にあたる年48万円(月4万円)に増額したい」と通知が届いた、という想定です。

前提は次のとおりです。更地価格は直近合意時点が1平方メートル当たり28万円(総額4,200万円)、現在が40万円(総額6,000万円)。固定資産税評価額は地価公示の7割程度とし、小規模住宅用地の特例と23区の都市計画税軽減を適用して、公租公課は直近合意時点が年約8.3万円、現在が年約11.9万円と置きます(負担調整措置は考慮しません)。

4つの手法で試算する

手法試算の考え方年額
差額配分法新規地代131.9万円との差額の2分の1を加算約78.0万円
利回り法合意時の純地代利回り0.373%を現在価格に適用約34.3万円
スライド法純地代15.7万円に変動率1.15を乗じる約29.9万円
比準賃料近隣の継続地代事例から(仮定)約36.0万円

差額配分法の新規地代は、更地価格6,000万円に期待利回り2%を掛けた120万円に公租公課11.9万円を加えて求めました。利回り法は、直近合意時点の純地代15.7万円(24万円から8.3万円を引いた額)を当時の更地価格4,200万円で割った0.373%を、現在の6,000万円に掛けて22.4万円、これに公租公課11.9万円を足しています。スライド法の変動率1.15は、物価と地価の動きを総合した仮の数値です。

差額配分法だけが突出する理由

一つだけ桁の違う結果が出ました。差額配分法の78.0万円は、現行地代の3倍を超えます。古くからの借地では、地代が新規の市場水準を大きく下回ったまま推移してきたことが多く、その差額をそのまま配分すると急激な増額になります。継続地代は当事者間の公平に留意して決めるものですから、契約の経緯や地代が低く抑えられてきた事情を踏まえ、この結果の重みは慎重に判断します。

残る3手法は29.9万円から36.0万円の範囲に収まりました。これらを中心に関連づけると、継続地代は年34万円から36万円前後、月額にして3万円前後という見立てになります。公租公課11.9万円の約3倍で、23区の住宅地で目安とされる範囲にも収まります。

請求額との差をどう読むか

地主が求めた年48万円は公租公課の約4倍です。目安の範囲内ではあっても、この事例の試算からは説明しきれない水準です。一方、借地人が「固定資産税が大して上がっていないから据え置きで」と考えるのも、この想定のように2014年から土地価格が4割以上上がっている場合には通りにくいでしょう。年24万円から36万円への改定なら、10年で120万円の差です。どちらの立場でも、根拠のある金額を先に示した側が協議の主導権を握ります。

地代の増減額で揉めたときの進め方

まず直近合意時点と資料を揃える

最初に確認するのは、最後に地代の額を合意した日と、そのときの額です。契約書、地代の改定通知や覚書、領収書や通帳の記録を集めます。あわせて、直近合意時点と現在の固定資産税・都市計画税の課税明細書(地主の手元にあります)があれば、利回り法やスライド法の検証がしやすくなります。更新料など地代以外の一時金の授受も継続地代の判断に影響しますので、借地の更新料に支払義務はあるのかもあわせてご覧ください。

訴訟の前に調停を経る

協議がまとまらない場合、いきなり訴訟を起こすことはできず、原則として先に調停を申し立てる必要があります(民事調停法24条の2、調停前置)。江戸川区の土地であれば、東京簡易裁判所が管轄となり、民事調停は錦糸町の墨田庁舎で受け付けています。調停委員には不動産鑑定士が選ばれることもあり、双方が出した資料の根拠が具体的に問われます。当事者双方が書面で合意すれば、調停委員会が定める調停条項に従って解決する方法もあります(同法24条の3)。

相手の鑑定評価書や提示額を検証する

相手方が鑑定評価書や「地代の査定書」を出してきた場合は、直近合意時点の取り方、新規地代を求める際の期待利回り、差額の配分割合、各手法の重みづけを一つずつ確かめます。数字の前提が一つずれるだけで、結論は大きく動きます。調停で通る資料・通らない資料の考え方は相手方の査定書にどう対抗するかで整理しています。

継続地代の鑑定評価書は40万円〜(税別)、相手方資料の検証(セカンドオピニオン)は5万円〜(税別)です。調停・訴訟など争訟案件は、価格等調査30万円・鑑定評価書60万円(税別)を起点にお見積りします。詳しくは料金のご案内をご覧ください。

まとめ

地代増額請求で問われるのは、新規の相場ではなく、直近に合意した地代からどれだけ事情が変わったかです。固定資産税の何倍という目安だけで決めず、4つの手法で根拠を示すことが、協議でも調停でも近道になります。

要点を振り返ります。

  • 地代の増減額は借地借家法11条(旧法の借地は旧借地法12条)に基づき、相手の承諾がなくても請求の時点から将来に向かって効力が生じる
  • 継続地代は、直近合意時点からの公租公課・地価・近隣地代の変動を踏まえ、差額配分法・利回り法・スライド法・比準賃料を関連づけて決める
  • 江戸川区の住宅地は小規模住宅用地の特例と23区の都市計画税軽減で公租公課が小さく、公租公課倍率法は補助的な目安にとどまる
  • 古くからの借地では差額配分法が突出しやすく、契約の経緯を踏まえた重みづけが要る
  • 協議中の支払額や供託は判断を誤ると年1割の利息や解除の問題につながるため、弁護士に確認する
  • 協議が調わなければ調停前置。江戸川区の土地は東京簡易裁判所(墨田庁舎)で調停を申し立てる

江戸川区で地代の増額を求めたい地主の方、増額請求を受けた借地人の方、そして地代の増減額事件を担当される弁護士の先生方にとって、継続地代は「何倍が相場か」という問いに一言で答えられない論点です。だからこそ、前回の合意からの変化を数字で示す資料に意味があります。

江戸川区・城東エリアの借地の地代でお悩みの方は、西葛西の鑑定士による初回無料相談をご利用ください。契約書と最後に地代を改定したときの記録をお手元にご用意いただければ、どの手法が効きそうかを含めて最初の見立てをお伝えします。

TAGS#地代増額請求#継続地代#借地#公租公課#江戸川区
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