間口狭小の土地の評価は、どのくらい下がるものなのでしょうか。小岩や篠崎の古くからの住宅地で、道路に面した幅は5メートルほどしかないのに、奥へ20メートル以上続く細長い土地を相続した。税理士からは「間口狭小と奥行長大の補正が入ります」と言われたものの、それが売るときの価格とどう関係するのかが分からない。江戸川区の旧市街に土地をお持ちの相続人の方から、こうしたご相談をいただくことがあります。
先に結論をお伝えします。相続税の評価では、財産評価基本通達の補正率を掛け合わせることで、間口5メートル・奥行24メートルの想定ケースは整った形の土地より約14%低くなります。一方、市場での価格の下がり方は補正率表どおりではなく、その土地で「どんな家が建つか」「誰が買うか」によって1割程度から2割を超えるところまで幅が出ます。相続税の申告は通達で、遺産分割や売却の判断は市場の目線で、と使い分けるのが基本です。
私たち鑑定士は、通達の補正率を出発点にしながらも、建てられる建物の幅、駐車場の取り方、買い手の層まで確かめて価格を判断します。本記事では、間口狭小・奥行長大・不整形地の補正の仕組み、小岩と篠崎を想定した試算、鑑定評価が必要になる場面を順に整理します。
間口狭小の土地の評価は通達でどう決まるか
路線価に「補正率」を掛けて求める
相続税や贈与税で土地を評価するときは、原則として路線価(道路ごとに国税庁が定める1平方メートルあたりの価格)を基に計算します。ただし、路線価は間口や奥行が標準的な土地を前提にした価格です。形が標準から外れる土地は、財産評価基本通達が定める補正率を掛けて価格を下げます。
まず奥行の長さに応じた「奥行価格補正率」(通達15、付表1)を掛け、そのうえで間口が狭い土地や奥行が長すぎる土地には、通達20-4の定めにより次の2つの補正率を掛けます。
- 間口狭小補正率(付表6):道路に面した幅(間口距離)が狭い土地の補正
- 奥行長大補正率(付表7):間口に比べて奥行が長すぎる土地の補正
普通住宅地区の補正率表
江戸川区の住宅地の多くは、路線価図で「普通住宅地区」に区分されています。この地区の補正率は次のとおりです(国税庁 財産評価基本通達 付表6・付表7、平成19年分以降用)。
| 間口距離 | 間口狭小補正率 | 奥行距離÷間口距離 | 奥行長大補正率 |
|---|---|---|---|
| 4メートル未満 | 0.90 | 2以上3未満 | 0.98 |
| 4以上6メートル未満 | 0.94 | 3以上4未満 | 0.96 |
| 6以上8メートル未満 | 0.97 | 4以上5未満 | 0.94 |
| 8メートル以上 | 1.00 | 5以上6未満 | 0.92 |
奥行距離が間口距離の6倍以上になると、奥行長大補正率は0.90です。間口が5メートルで奥行が24メートルなら、奥行は間口の4.8倍なので、間口狭小0.94と奥行長大0.94の両方が掛かります。
不整形地の補正と組み合わせるときの上限
土地が長方形でなく、旗竿地(道路に細い通路部分だけで接する土地)や台形のような形をしている場合は、通達20の「不整形地補正率」(付表5)を使います。想定整形地(その土地をすっぽり囲む長方形)に対して土地が欠けている部分の割合(かげ地割合)が大きいほど、補正率は低くなります。
間口も狭い不整形地では、不整形地補正率に間口狭小補正率を掛けた数値を使いますが、下限は0.60です(付表5の注3)。また、奥行長大補正率の適用もある場合は、選択により「間口狭小補正率×奥行長大補正率」で計算してもよいとされています。どちらが有利になるかは土地の形で変わるため、両方を計算して比べます。
鑑定評価では間口狭小の土地をどう見るか
個別的要因としての「間口、奥行、地積、形状」
不動産鑑定評価基準は、住宅地の価格に影響する個別的要因(その土地だけが持つ特徴)として、「間口、奥行、地積、形状等」を挙げています(不動産鑑定評価基準 総論第3章第3節)。通達と同じ項目ですが、決定的に違うのは、鑑定評価では補正率表を機械的に当てはめるのではなく、その地域の市場で買い手がどれだけ値引きを求めるかを取引事例から読み取る点です。
たとえば同じ間口5メートルでも、駅に近く3階建ての狭小住宅がよく売れている地域なら減価は小さく、車が生活の足で駐車場2台分がほしい地域なら減価は大きくなります。表の数字は全国共通ですが、市場の反応は地域ごとに違うのです。
建てられる建物の幅で考える
間口狭小の土地を見るとき、私たち鑑定士がまず確かめるのは「建物の幅が何メートル取れるか」です。民法234条1項は、建物を境界線から50センチメートル以上離して建てることを求めています。間口5メートルの土地で両側を50センチメートルずつ空けると、建物の幅は4メートルです。
ただし、防火地域・準防火地域で外壁が耐火構造の建物は、隣地境界線に接して建てることができます(建築基準法63条)。最高裁平成元年9月19日判決は、この規定が民法234条の特則にあたると判断しています。江戸川区の旧市街には準防火地域が広く指定されているため、建物の構造しだいで使える幅が変わります。どの規制がかかるかは、都市計画図と建築士の確認で押さえる必要があります。
奥の部分は「効用」が下がる
奥行が長い土地は、道路から遠い奥の部分ほど使い道が限られます。建物は道路側に寄せて建てることが多く、奥は庭や物置として使うしかないケースもあります。鑑定評価では、面積が広くても奥の部分は同じ単価では評価しない、という考え方をとります(奥行逓減)。通達の奥行価格補正率も同じ発想ですが、実際の減価の大きさは地域の建物の建ち方を見て判断します。
想定されるケース|小岩と篠崎の細長い宅地を試算する
前提
間口5メートル・奥行24メートル、面積120平方メートルの長方形の宅地を2か所で想定します。比較の基準は、同じ面積で間口10メートル・奥行12メートルの標準的な宅地です。数値はいずれも説明のための想定です。
- ケースA:JR小岩駅から徒歩8分、旧街道沿いの商店と住宅が混在する一帯。狭小3階建ての新築需要がある
- ケースB:都営新宿線篠崎駅から徒歩18分、旧集落の住宅地。車を持つ世帯が主な買い手
- 路線価は両ケースとも1平方メートルあたり40万円(普通住宅地区)と仮定
相続税評価はどちらも約14%減
奥行24メートルは奥行価格補正率0.97、間口5メートルは間口狭小補正率0.94、奥行÷間口は4.8倍なので奥行長大補正率0.94です。
「40万円×0.97×0.94×0.94×120平方メートル」で、評価額は約4,114万円になります。標準的な宅地(40万円×120平方メートル=4,800万円)に比べて約14%低い水準です。通達の計算は場所を問わないため、ケースAもケースBも同じ結果になります。
市場での減価は地域で分かれる
一方、市場の価格はケースごとに異なります。標準的な宅地の時価を1平方メートルあたり50万円(120平方メートルで6,000万円)とし、間口と奥行による減価を地域の取引事情から次のように見込んだ場合の目安です。
| 区分 | 形状による減価 | 時価の目安 | 相続税評価額 |
|---|---|---|---|
| 標準的な宅地 | ― | 6,000万円 | 4,800万円 |
| ケースA(小岩) | ▲10% | 5,400万円 | 約4,114万円 |
| ケースB(篠崎) | ▲22% | 4,680万円 | 約4,114万円 |
ケースAでは、建売業者が幅4メートル前後の3階建てを建てて売る需要があり、形の悪さが価格に響きにくいと考えます。ケースBでは、間口5メートルでは車2台の並列駐車が難しく、奥の部分も使いにくいため、通達の補正より大きな減価を見込みます。
同じ形の土地でも、市場の価格差は約700万円に広がりました。遺産分割で相続人の一人がこの土地を取得し、他の相続人に代償金を払う場面では、この差がそのまま取り分の差になります。路線価で分けたときの問題は路線価だけで分けると損をするのは誰かでも解説しています。
旗竿地・無道路地に近い形はさらに注意が必要
旗竿地は通路部分の幅と長さで建築が制限される
奥の土地が細い通路だけで道路に接する旗竿地は、東京都建築安全条例3条の制限を受けます。通路部分(路地状部分)の長さが20メートル以下なら幅2メートル以上、20メートルを超えるなら3メートル以上が必要です。さらに、耐火建築物・準耐火建築物以外で延べ面積が200平方メートルを超える建物では、それぞれ1メートル広い幅が求められます。
通路の幅が基準に1センチメートルでも足りなければ、原則として建て替えができません。小岩や篠崎では、昔の敷地の分け方のまま通路幅が1.8メートルといった例もあるため、測量図で実際の幅を確かめることが先決です。
無道路地は通路開設の費用を差し引く
建築基準法上の道路に2メートル以上接していない土地(無道路地)は、相続税評価で、通路を開設したと仮定した部分の価額を差し引きます。控除額の上限は、不整形地として計算した価額の40%です(通達20-3)。
市場では、隣地から通路部分を買い取れる見込みがあるかどうかで価格が大きく変わり、見込みがなければ通達の控除よりはるかに低い価格でしか売れないこともあります。再建築できない土地の価格の考え方は、本体サイトの再建築不可物件はいくらで売れるのか?更地価格の2割から7割まで変動する理由を鑑定士が解説で詳しく解説しています。
小岩の土地を相続したら確認したいこと
相続手続の前にそろえたい資料
- 測量図(地積測量図・確定測量図)と公図:間口と奥行、通路部分の幅を正確に測る
- 路線価図:地区区分(普通住宅地区か普通商業・併用住宅地区か)と路線価
- 都市計画図:用途地域、防火地域・準防火地域の別、容積率
- 前面道路の種別:2項道路ならセットバックの面積も加味する
前面道路が幅4メートル未満の2項道路であれば、間口の狭さに加えて後退部分の減価も重なります。この点はセットバックが必要な土地の価格は何割下がるかをご覧ください。
申告と遺産分割で評価を分けて考える
相続税の申告では、通達の補正率を正しく当てはめることが第一です。どの補正率を使うか、不整形地補正と組み合わせるかといった判断は、税理士にご確認ください。
一方、遺産分割や相続した土地の売却では、相続人の間で「この土地はいくらなのか」を共有する必要があります。形の悪い土地ほど路線価と時価の開きが読みにくく、相続人の一人が不動産会社の査定を持ち出すと話がまとまらなくなりがちです。当事者の納得が必要な場面では、減価の根拠を示せる鑑定評価書が役に立ちます。
土地・戸建住宅の鑑定評価書は30万円〜、金額の目安を知るための価格等調査報告書は15万円〜、相手方の査定書などを検証するセカンドオピニオンは5万円〜です(いずれも税別)。詳しくは料金のご案内をご覧ください。
まとめ
間口狭小の土地の評価は、相続税では通達の補正率で一律に決まり、市場ではその地域でどんな家が建ち、誰が買うかで決まります。同じ土地でも、両者の下がり方が一致するとは限りません。
要点を振り返ります。
- 相続税評価では、奥行価格補正率に間口狭小補正率・奥行長大補正率を掛けて求める(財産評価基本通達15・20-4、付表6・付表7)
- 不整形地補正率と間口狭小補正率を組み合わせる場合の下限は0.60で、奥行長大がある場合は計算方法を選べる
- 間口5メートル・奥行24メートルの想定ケースでは、相続税評価は整った形の宅地より約14%低くなった
- 市場での減価は、小岩駅近くの想定で約1割、篠崎の車社会の想定で約2割と、地域によって大きく分かれた
- 旗竿地は東京都建築安全条例の通路幅、無道路地は通路開設費用の控除(上限40%)を確かめる
小岩・篠崎・平井などの旧市街で、間口が狭く奥に長い土地を相続した方、遺産分割でその土地の価格が争点になっている方、そうした案件を扱う税理士・弁護士の方は、まず測量図で間口と奥行を正確に押さえるところから始めてください。
江戸川区・城東エリアで、間口狭小や不整形な土地の評価でお悩みの方は、西葛西の鑑定士による初回無料相談をご利用ください。測量図や路線価図を拝見したうえで、通達の評価と市場の価格がどのくらい離れそうかをご説明します。相続の不動産評価もあわせてご覧ください。


